アウストラロピテクス
ルーシー
ルーシーの標本

アウストラロピテクスは、進化論では400万年前から200万年前に存在した、人間の祖先の化石とされています。この中では、1974年にエチオピアで発見された、ルーシーという化石が有名です。現在はエチオピア国立博物館に保存されています。この化石はチンパンジーに良く似ていますが、進化論の立場をとる研究者からは、直立歩行していただろうと信じられています。

★ タウング化石

アウストラロピテクスの化石を最初に発見したのはレイモンド・ダートという学者でした。彼は、タウングという場所で見つかった頭蓋骨の化石を、直立歩行する人類の祖先の化石として発表しました。この化石はアウストラロピテクス・アフリカヌスと名づけられ、200万年から300万年前の化石とされました。ところがその後、この化石が発見された洞窟が、87万年以上前には存在しなかったという調査結果が出ました。つまり、この化石は87万年前より新しく、アウストラロピテクスはその時まで存在していたということになります。

★ 適者生存

進化論の土台になっている考え方に適者生存という考え方があります。それは、新しい種類に進化するには、古い種類が絶滅しなければならないという考え方です。もし、古い種類が残っていると、古い遺伝子がいつまでも残り、進化を妨げることになるからです。しかし、この87万年という年代は、進化論の上では、アウストラロピテクスが絶滅して、新しい種類に進化していなければいけない年代です。このことから、アウストラロピテクスが人類の祖先であるということに矛盾が生じてしまいました。進化論の立場からは、この化石は他の種類の化石だったのかもしれない、または、87万年という調査結果は信頼できないという説明がされています。

★ KNMER-1470

また、リチャード・リーキーという考古学者が、アウストラロピテクスが発見された地層よりも下の地層から人間の頭蓋骨の化石を発見しました。この化石はKNMER-1470と名づけられました。進化論では下の地層ほど古い化石だとされているので、アウストラロピテクスは、人間より新しいことになります。アウストラロピテクスが人間の先祖であれば、人間が現われてからは、絶滅するはずです。進化論の立場をとる研究者の中にさえ、アウストラロピテクスは人間の祖先とは関係ないと考える人もいるのです。

アウストラロピテクス・セディバ
アウストラロピテクス・セディバの手の化石

このように、進化論の解釈は、新しい発見や調査により現在も変わっているのです。ルーシー以外にも、アウストラロピテクスの化石はたくさん見つかっています。ルーシーには手足の指がありませんでしたが、それらのアウストラロピテクスの化石の指やつま先は、長く、カーブした形をしています。これは、地上を歩くのではなく、木の上で生活する特徴を示しています。アウストラロピテクスが人間の祖先ではなく、絶滅した猿の一種と考えるならば、その化石の矛盾点に関してさまざまな解釈を施す必要はありません。実際、創造論の視点から研究する科学者たちによって、アウストラロピテクスの化石はそのように判断されています。

(理学博士 吉尾圭司