発掘されたネアンデルタール人など(1)(2)の骨からDNAを抽出し、現在の人類のDNAと比較することによって、進化の痕跡を見い出せるのではないかー
進化の機序を説明するさまざまな説が暗礁に乗り上げる中、科学者たちは目覚ましく発達したDNA分析技術に活路を求めました。その結果はどうだったのでしょうか。
2010年、ネアンデルタール人のDNA解析(1)のレポートが超一流科学雑誌である"サイエンス"に発表されました。解析の結果、そのレポートの中で次のように述べられています。
「ネアンデルタール人は、ネアンデルタール人が互いに親戚関係にある以上に、現在の人類と親戚関係にある。」
進化論の立場を取っている有名雑誌、"ナショナルジオグラフィック" 2012年10月号では、進化論学者によって、
「親戚関係を持たない現代人2人の遺伝コードを比較すると、数百万単位で異なる部分が存在する。ところが、ネアンデルタール人と現生人類のゲノムには、平均でおよそ10万カ所しかない。」
という事実が記載されており、その事実の解釈として、ネアンデルタール人と現生人類との間に異種交配があったのではないか、という仮説が述べられています。しかし、この仮説は"ネアンデルタール人という原生人類と違う人種が存在する"という前提に立った仮説です。
2013年にも、ネアンデルタール人を含む人類中間種のY染色体の分析研究(3)で、同様の結果が得られています。人類とネアンデルタール人のDNAの差は、人類同士のDNAの差より小さかったのです。
ネアンデルタール人のDNA研究結果は、ネアンデルタール人のDNAは人間のDNAと何ら違いは無いことを明らかにしたもので、それはすなわち、ネアンデルタール人は人間であることを証明しているのです。
(1)Green, R. E. et al. 2010. A Draft Sequence of the Neandertal Genome. Science. 328 (5979) : 710-722.
(2)Reich, D. et al. 2010. Genetic history of an archaic hominin group from Denisova Cave in Siberia. Nature. 468 (7329): 1053-1060.
(3)Mendez, F. L. et al. 2013. An African American Paternal Lineage Adds an Extremely Ancient Root to the Human Y Chromosome Phylogenetic Tree. The American Journal of Human Genetics. 92 (3): 454-459.
ひとくちメモーDNAとは?人間や他のほとんどの生物の遺伝情報を担っている物質です。(「進化論を斬る」では、"DNA"イコール"遺伝子"の意味で用いています。)人間では DNAの配列は一人ひとり異なっており、完全一致するのは一卵性双生児の場合です。親・兄弟・親類などの間では共通している部分が多く、赤の他人ほど異なる部分が多くなります。つまり、異なる部分が多い少ないは、血のつながりの程度を示します。(ネアンデルタール人が人間と違う種の生物であれば、血のつながりは当然ありませんから、そのDNAは人間のDNAと異なっているはずです。しかし分析の結果は、科学者たちの期待を裏切るものであり、両者のDNAに違いはなかったのです。) |